カルシウムは人体に含まれるミネラル(無機質)の中で最も多く、その99%は骨や歯に分布し、骨の硬度の維持に深く関わっています。約1%は血液や筋、神経などに存在し、筋肉の収縮や神経伝導などに関与しています。
血清中のカルシウムのうち生体内で生理的作用を示すのは遊離カルシウムイオンで、測定するカルシウムの約半数です。残りの大半はアルブミンなどの蛋白と結合しています。アルブミンの値が低いと遊離カルシウムイオンの割合が増加します。生理的活性のあるカルシウム値はアルブミンの値が4.0g/dL以下の場合は以下の式で補正して評価します。
補正カルシウム値mg/dL=測定したカルシウム値mg/dL+(4-アルブミン値g/dL)
例)カルシウム 8.9 mg/dL, アルブミン 3.6 g/dLの場合
補正カルシウム=8.9+(4-3.6)=8.9+0.4=9.3
血清カルシウムの値が高いと便秘・嘔気・嘔吐などの消化器症状や、意識障害を起こすことがあります。逆に低いと、神経・筋が過敏になり筋痙攣や手指のしびれ感などを起こすことがあります。血液透析さまにおいて、血清カルシウムの目標値は上記の補正カルシウム値として8.4~10.0mg/dLです。その範囲内においては、血清カルシウムの値は低い方が死亡のリスクが低く、血清カルシウム高値は大動脈などの石灰化に関与し生命予後に関わっているようです。
血清カルシウムの値はアルファロールやロカルトロール、オキサロールといったビタミンDのお薬の影響を受けます。ビタミンDは腎臓で活性化されるビタミンで、腎不全状態では欠乏状態にあります。
ビタミンDは骨密度の維持に関わっており、
・腸管からのカルシウム吸収が増える
・骨から血中へカルシウムを放出させる
ことによりカルシウムを上昇する方向に勧めます。
また、ビタミンDには
・血圧上昇などに関与するレニン分泌抑制する (心臓、腎臓保護作用)
・動脈硬化を抑制する
・免疫能を改善する
・炎症を抑制する
と骨代謝関連だけではなくて、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系、免疫・炎症系に対する多面的な作用もあるようで、生命予後の改善も報告されています。ビタミンDは使用した方が良いと考えますが、カルシウム濃度が上がりすぎないよう注意が必要です。
また、リンを下げる薬、炭酸カルシウムはカルシウムを含むため血中カルシウムが上昇します。
透析液のカルシウム濃度は、以前は3.0mEq/Lと高めのものが一般に使用されていましたが、カルシウムはどちらかというと低い方が予後良好であることが解かり、近年では2.5mEq/Lと低めのものも使用できるようになりました。
当院は2.5mEq/Lの透析液を使用し、血清カルシウムが高すぎなければ必ずビタミンDをお出しするようにしています(内服と注射があります)。カルシウムはリンと共に二次性副甲状腺機能亢進症に深く関与し、低カルシウム血症はi-PTHを上昇させますが、そのお話は別の機会でしたいと思います。
<まとめ>
・血清カルシウムは以下の式で補正して評価します。
補正カルシウム値mg/dL=測定したカルシウム値mg/dL+(4-アルブミン値g/dL)
・補正カルシウム値の目標は8.4~10.0mg/dLです。
・ビタミンD、炭酸カルシウムは血清カルシウム値を上昇させます。
・ビタミンDは骨密度を維持したり、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系、免疫・炎症系に対し改善する作用を持ってますが、透析患者さまは不足しており、薬で補った方が予後がよいと考えます。