高リン血症は血管の石灰化や、骨をもろくし、異所性石灰化を引き起こすなどの問題があります。詳しくは、ミネラルについて 透析患者さまとリン ~高リン血症はなぜ悪いのか~を御覧ください。ここではリン制限を実際に行う上での注意点を記します。
リンは蛋白質に多く含まれます。リン制限は蛋白質管理ともいえます。リンの制限は重要ですが、蛋白質の摂取が少ないと、死亡リスクが高まることが分かっています。単に蛋白質の摂取を減らすのではなく、体に必要とされる適切な蛋白質を含む食品を摂りながら、リンの値を適正に保つ工夫が必要となります。
1日のリンの摂取量の目安は
理想体重 40kg だと 720mg
50kg だと 900mg
60kg だと1080mg
70kg だと1260mg
といわれています。理想体重は身長(m)x身長(m)x22で計算します。
例えば身長160㎝の場合は理想体重は 1.6x1.6x22=56.3kgとなります。
透析時間や透析の血流量を増やしたり、リンの吸収を抑える薬を使用したりすることによりリンを下げることが可能です。定期採血でリンが3.5-6.0 mg/dLの範囲になるように、こういった透析条件や薬剤の調節 (外出時など飲み忘れに注意) を行うともに、食事の内容を見直していきます。
同じ蛋白質の量であっても、含まれるリンの量はさまざまです。以下に主な食品のリンの含有量の表を示しました。例えば同じチーズ でもリンはプロセスチーズと、クリームチーズとでは大きな違いがあります。肉は部位によって異なり、レバーには多く、ミノ(胃)やアキレスは少ないです。蛋白質あたりのリンの量が少ない食事の方が蛋白質を多く摂取することができます。
また、リンには以下の種類があり、それぞれ吸収率が異なります。
有機リン 動物性 40-60%吸収 (肉類・魚類など)
植物性 20-40%吸収 (大豆など)
無機リン 100%近く吸収 (加工食品に含まれる食品添加物、インスタント食品、菓子、飲料など)
このように食品添加物に含まれる無機リンは吸収率が高いので注意が必要です。コーラは350mlあたり40-70mgのリン酸塩を含んでおり、ほとんど腸管から吸収されてしまいます。インスタント麺のゆで汁は捨てて、麺とスープは別に作るなど、食品添加物のリンを下げる工夫をしましょう。リンは便中にも排泄されます。食物繊維をとって便秘にならないようにすることも大切です。
<まとめ>
・リンを避けるあまりにたんぱく質不足ならないように注意
・リンの目標値は3.5-6.0 mg/dL
・リンの少ないたんぱく質を選ぶ
・吸収されやすい無機リンを含む加工食品に注意
・食物繊維をとって便秘にならないように注意
・リンを下げる薬を上手に使用し、飲み忘れに注意
主な食品のリン含有量早見表 東京医科大学腎臓内科 菅野 義彦教授監修