血液透析患者において、高リン血症は血管の石灰化を引き起こすなど、悪影響を及ぼし、注意が必要であることを以前ブログに掲載いたしました。今回はリンの代謝に関わるcalciprotein particles (CPP) についてご報告いたします。
カルシウムとリンは結晶性ヒドロキシアパタイトとして沈殿します。しかし、リン酸カルシウム結晶はFetuin-A (フェチュイン-A)とともに可溶性のcalciprotein particles (CPP)を形成することにより、沈殿が起こるのを防いでいることが近年報告されてきました。(フェチュイン-Aは以前より石灰化抑制因子として知られていました。) リン酸カルシウム結晶含有フェチュイン-A分子が凝集してナノ粒子、一次CPPを形成します。一次CPPはトポロジカルな再配列を受けて、安定した構造を形成(二次CPP)します (図)。CPPは骨へ運ばれ、骨の材料となる一方、骨細胞のCPP受容体を刺激し、FGF-23の分泌を促進します。FGF-23は左室肥大を引き起こす等、心血管病の発症に関与し、生命予後に影響します。CPPは血中を循環し、血管石灰化、慢性炎症および早期老化表現型に寄与する可能性が指摘されています。
<まとめ>
・リン、カルシウム、フェチュインA等によるCPPを形成することにより、過飽和のカルシウムとリン酸が沈殿するのを防いでいる。
・ CPPは骨へ運ばれ、骨の材料となる一方、骨細胞のCPP受容体を刺激し、FGF-23の分泌を促進する。
・ FGF-23は左室肥大等を引き起こし、うっ血性心不全などの心血管病の発症に関与し、生命予後に影響する。
・ CPPは血中を循環し、血管石灰化、慢性炎症および早期老化表現型に寄与する可能性がある。